K's Review

書きたいこと いろいろ!!

映画【上京ものがたり】森岡利行 監督

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前に【女の子ものがたり】を観て(ブログ
【女の子ものがたり】/【上京ものがたり】の
Book版なんかを読んでいたら
【上京ものがたり】の映画版 にも興味が出てきて
レンタルで借りて 観ました.
【女の子ものがたり】にもあった
西原理恵子の ”西原ワールド” が ここにもあります.
(じつは ”森岡利行ワールド” かもしれません.)

絵を書くのが好きだけれど 下手で貧乏な美大生
生きるための キャバクラでの アルバイト
やさしいけれど 続かない
だから 金もなくて 女の甘えるだけのプータロー.

絵で 小さなアップグレードを模索する
主人公”なつみ”.
それを応援する キャバクラの先輩.

暖かくて 切なくて
自分も そうだったような 人生.
何故か 泣けてきますね.
心のオアシス かもしれません.

【女の子ものがたり】/【上京ものがたり】の
Book版/漫画版/DVD版は どれも良かったですね.
また 【パーマネント野ばら】についても
リポートしたいと思っています.

本作のような 小型の傑作が うまく流通して
制作した方たちに 還元されるようなルートが
もっとできればイイナ とも思っています.

[ DVDレンタルで観ました ]

映画【嫌われ松子の一生】中島哲也 監督

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”嶽本 野ばら”(たけもと のばら)【下妻物語】は
超現代的な装飾と脚色に 富んでいたけれど
プロットは けっこう平凡だった.
映画【下妻物語】では
その 超現代的な装飾と脚色 については
よく表現できていたけれど
ほんとうに それだけで ”現代” は表現できたのだろうか?

いっぽう ”山田 宗樹”(やまだ むねき)の
嫌われ松子の一生】は
”松子” の生きた【昭和】や【平成】の匂いも少なく
平凡なテンポの物語だったけれど
画期的なことがあった.
それは 破滅的行動体=”松子” が創造されたことだ.

この ”松子” には 彼女の 革命的な実態を
ほんとうに表現できる舞台が 必要だった.
そして ずっとずっと 現代性とは何か を求め続けていた
”中島 哲也” は その舞台を 作り上げたといえる.
強調色の幻想的な色彩
ショートカットの多用
テンポの良い 場面変換
そして 音楽!!
この舞台の中で ”松子” は 跳ね回り/飛び回り
思いっきり生きて そして死んだ.
(”笙(しょう)” の 調べる というよりは
 少し離れて観ている という立ち位置も 良かった.)

ところで この 破滅的行動体=”松子” の
実体というのは 何だろうか.
... 現代に生きる われわれダ ...
と 言ってもイイと思う.
ペラく/浅い 知性
思い込みが激しく
こうと決めたら すぐ行動に移して
あとから これを 振り返ろうとしない.
”松子” は 我々の一部なのだ.

こんな ”松子” を観ていて
私たちは ほんとうに笑えただろうか??

ほんとうに素晴らしい 1本だった.
未見の方には 超オススメです.

[800円のDVDで観ました.
 すべてのDVDを800円にしてほしいと思っています.]

小説【はだかんぼうたち】江國香織

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ある年の 11月.

独身の女性歯科医 桃 と
反対の性格で 4人の子ども持ちの親友 響子(ヒビキ)
桃 の 若い恋人 鯖崎(さばざき)
最近まで密接だった 石羽

響子の夫 隼人
亡くなった響子の母=和枝
和枝と暮らしていた男=山口

桃の 父=詠介(えいすけ) 母=由紀
画廊に勤める 桃 の友人=みな子(=石羽の妹)

40才を超えて 独身で 共同住宅に住む 姉=陽
陽と同じ共同住宅に住んでいる 陽の男友達=名良橋

みんな ミドルか それ以上の アパーな生活を営む人たち.
彼らを まるで絵の中の情景のように
細部まで説明しながら 物語は書き綴られ
彼らの周辺には 何も起こらないように見える.

しかし 翌年の 2月までの間に
小さな渦が また別の小さな渦を誘発するように
スライドが 少し違った情景のスライドに変わるように
小さな変化を起こし続けて
読者を クワイエット・ストームな感動に巻き込みながら
小団円に向かう ...
そんな物語でした.

感動しました.

映画[ 女の子ものがたり ]森岡利行 監督

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描けない女性マンガ作家なっちゃん).
彼女が 自分のルーツをふりかえるうちに
そのルーツを マンガに書こうと思うようになる物語です.

小学生のとき 四国の 田舎町の
新しいお父さんのところに 母と引っ越して来た少女が
その町で出会った2人の少女たち との
”ロワー” で ”フツーな” 人生の思い出.

男の子たちからは いじめられ
金持ちの子女は 好きじゃない.
でも 東京に出た ”なっちゃん” と 友人2人と間にも
いつのまにか 溝が生まれ
その溝が しだいに深くなっていって ...  

そんな 少女たちの 歩いて来た道を
漫画家になった(私)が ルックバックする ”ものがたり” です.

しだいにモザイク化していく 私たちの社会
その 明るそうなのに明るくない現実を 巧みに描いた作品です.
優れた”せりふ”作り 出演者の”くったくのない演技”
深津絵里 の奇妙な魅力 には
演出者の パーソナリティーを感じてしまいます.

一気に 原作者の 西原理恵子さん と
監督/脚本の 森岡利之さん に興味がわいてきました.

[ Hulu で観ました ]

小説【センセイの鞄】(川上弘美)

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高校で 国語を教えた センセイ と 教え子の ツキコさん が
ツキコさん が 三十七才
センセイ が 三十七才+三十才+α のとき
酒場で出会ってからの
愛のような 恋のような 行き来を描いた作品です.

はじめは そんなふうに思って読んでいて
実際そんなふうな作品なんですけれども
(それで レビューの中には そんなふうな
 起伏のない単調な作品と評価していた方も おられましたが ...)
読み進んでいきますと 私の中で
少し違った感情が 沸き上がってくるのです.

それは この物語が 幻想的な物語ではないか? という感情です.
この本を読まれた方は 特に男性のかたには
信じがたい感情ですが(私も男性ですが)
私には この物語は 何か 市井の生活と 架空の幻想的な世界との
接点あたりを歩いているように感じてしまうのです.

描かれているのは 市井の生活そのものなのに
少し突き詰めてみれば そのような生活からの 著しい逸脱.
師弟関係 / ヘンテコな出会い / 異常に離れた年齢
/ どこにでもありそうな酒場での ピュアすぎる交流 ...
このような逸脱が 幻想でなかったら
それをなんと呼べば良いのでしょうか?

この 日常的であって幻想的な世界は
私たちを この愛って どんなものなんだろうかとか
愛(恋)って いったい何だろうかという
ほんのちょっぴり哲学的なところまで 連れて行ってくれます.

すがすがしい後味の残る 良品でした.

ですから 本作品をもとにしたマンガ版 と
別の 川上弘美さんの本を 追加して買いました.

映画[ 瞳の奥の秘密 ]フアン・ホセ・カンパネラ監督

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映画の長さだけ 中くらいのサスペンスが ずっとずっと続きます.
1人の若い女性が虐殺され
その夫と その事件を担当した検事たちの 25年間が描かれます.

試練を生きる人たち!!
担当検事 その上司の女性検事 担当検事の相棒
虐殺された女性の夫.
彼らの犯人探し
担当検事の 女性検事への愛
妻を殺させた夫の 妻への愛.
彼らが生きる形を 25年の時間を行き来しながら
映しだしていきます.

背後にあるのは アルゼンチンの政治的不安定.
軍事政権.
不条理の中で 人間的に生きようとする力に 打たれます.

アマゾンの批評の中に
ガルシア・マルケス に通じるところがある と
書いていた方がおられましたが 同感です.
この映画を観ながら
彼の著作を映画化した【コレラの時代の愛】のことを
連想していました.
ラテン人たちの 生き方 生きる目標 その美学
ほんとうに 共通性があると思いました.

この映画の素晴らしさには 感動の一語です.
数々の賞を獲得したのも うなずけます.
特におすすめできる 素晴らしい映画です!!

[今日 Chromecast で Googe Play でレンタルして観ました
 Chromecast の設定には 少し混乱しましたが
 映画は 問題なく観ることが出来ました.
 Chromecast を 父の日 のプレゼントにしてくれた家族に
 感謝します!!]

アンジェイ・ワイダ【カティンの森】

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ポーランドの巨匠=アンジェイ・ワイダ監督の
映画【カティンの森】は そのバックグラウンドの理解なしには
観ることのできない映画ですので
あらかじめ 私なりの説明をしておきます.

ポーランド は 古くは東ヨーロッパの大国でしたが
ドイツ人やロシア人の勢力が増してからは 勢いが劣勢で
両国に国土を切り取られることも多く
国内勢力の対立も原因の1つでした.
ポーランド人の国家自体が なくなるという
民族の危機も 何度か経験しています.

第2次世界大戦は ナチス・ドイツが 1939年9月1日に
ポーランドに侵攻したことで 始まりましたが
およそ1か月程度で ポーランドは東西に分割され
西側は ナチス・ドイツが 東側は ソ連が 支配することになります.
ナチス・ドイツとソ連は あらかじめ秘密条約を結び
 それを実行した結果 このようになりました)

このとき ソ連支配地のポーランド兵は捕捉されましたが
この中の将校以上の兵士が
現ロシア スモレンスク近郊の ”カティンの森” で
大量に殺害されました.
何人 殺害されたかは 正確にはわかっていません.
5000人から20000人の間だと言われています.
ソ連が 上層部の命令で実行したと 言われています.
ポーランドを壊滅させるには
軍事技術を含む いろいろな技術を持っていたポーランド将校団を
抹殺することが 早道だったと
説明する人もいます.
[もっと詳しく知るには  ]
(恐ろしいことです!!)
ワイダ氏の父も この事件で 亡くなったそうです.

映画のほうですが
この事件に巻き込まれた 将校たちの動向と家族の対応を
ドキュメンタリーのように 抑えた表現で描写していきます.
観るものを捉えて話さない力量は さすが ワイダ です.

少し重苦しい時間にも耐えることができて
社会や歴史にも関心がある方にとっては
この映画は 良作だと思います.

(追記)
ポーランドでは 第2次大戦中 いくつかの悲劇がありました.
アウシュビッツ収容所
  ポーランドは ユダヤ人に寛容でしたので
  たくさんのユダヤ人が住んでいました.
  しかし ナチスの人種政策によって
  ユダヤ人などが ここに収容され
  多くの人が亡くなったと 言われています.
ワルシャワ蜂起
  1944年夏 壊滅寸前にあったドイツ軍に対して
  ワルシャワ市民とポーランド軍が 起こした蜂起です.
  これに対する ソ連軍の対応が鈍く
  再結集したドイツ軍によって 蜂起軍は 殲滅されました.
  およそ20万人の ワルシャワ市民が亡くなったと言われています.
  蜂起軍壊滅のあと ソ連軍は 廃墟になったワルシャワを占領します.
  ソ連軍の対応の鈍さが
  ポーランドのロンドン派の力を 削ぐためだったという
  意見もあります.
  ワイダ氏の監督した映画 【灰とダイアモンド】も
  ポーランドでの ロンドン派と親ソ連派の争いを 背景にした
  映画です.

NHK BS で観ました ]